映画の地球 音楽の気流 そして書籍の宇宙

智慧の水球に揺蕩うように生きてきたわが半生。そろそろ御礼奉公の年齢となったようで・・・。玉石混淆、13年の日本不在のあいだに誉れ高きJAPONへの憧憬を募らせた精神生活の火照りあり。

映画の地球  プーチン独裁下のロシア映画 3 映画『スペツナズ ~ロシア特殊部隊』 アンドレイ・マルコフ監督

映画『スペツナズ ~ロシア特殊部隊』 アンドレイ・マルコフ監督

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 ロシア及び旧東欧諸国の映画を丹念に拾い上げている彩プロのDVDの一作。もともと連続テレビドラマとして制作された約45分の番組から2本選び、まとめた編集。ロシア陸軍のいわゆる特殊部隊スペツナズの活躍を描く。昔、日本でも人気のあった米国の連続TVドラマ『コンバット』に良く似たシリーズだ。
 2006年の制作だから当然、プーチン大統領の1期目に放映されている。映画としてみれば取り立てて言及するほどの作品ではないが、たとえば1話目の旧ユーゴスラビアの特定はしていないが、設定からしてコソボを舞台にしているだろう。コソボの多数派アルバニア系、セルビア系市民は少数派、映画ではアルバニア系の武装組織によって残酷な弾圧を受けていると描き、国連が派遣した治安維 持のフランス軍へも容赦なく攻撃を仕掛けていると描かれる。
 つまり当時、欧米ないしEU諸国はアルバニア系住民の主権回復としてのコソボの独立を支援し、セルビア及びロシアはコソボセルビアの一地方として留まるよう支援しているという構図。本作は、セルビア市民のほうが被害者にあって、その市民たちを擁護する立場からスペツナズ兵士を派遣しているというわけだ。そんな戦争ドラマがロシアで制作され、全国放映されていたという映像資料である、ということだ。アルバニア系武装組織がセルビア正教会の司祭や信徒たちを残酷に殺戮するシーンはあざとい。
 2話目は中央アジアタジキスタンを舞台にしたものだが、 ここでは穏健なイスラム指導者を身を挺して反政府武装勢力から守っているという内容のものだ。ともにプロバカンダのきな臭い異臭に満ちている。