映画の地球
メキシコの女優エルピィデア・カリロのこと 年の瀬、掃除も兼ねた不用品の処分をしていると、一群のVHSビデオに出会う。それは主にラテンアメリカを舞台にした米国映画で1980~90年代に制作されたものだ。すでに繰り返し観たので内容は十分、把握して…
サム・ペキンパー監督『戦争のはらわた』 言わずと知れた戦争映画の傑作として名を遺す40年前のフィルム。ことし公開40周年を記念してデジタル・リマスター版で蘇り8月下旬に単館ロードショウが行なわれる。マスコミ試写が解禁、改めてペキンパーの妥協…
トランプ大統領が嫌うCNNについて 映画『ライブ・フロム・バグダッド』 ミック・ジャクソン監督日韓共催のFIFA・W杯で湧いた2002年に米国の有料TV局から全世界に配信された映画。サダム・フセイン独裁下のイランで活動したCNNバグダッド特…
映画『ラビング ~愛という名前のふたり』ジェフ・コリンズ監督 愛はときとして人を強靭にする。愛の力によって市井の人が控えめに歴史の一ページを開いてしまうことすらある。それはおそらく宝くじに当たるより稀なことだろうが、大金を確かに手にする人が…
映画『リベリアの白い血』 福永壮志監督 血が噴き出している南北格差の問題を国境をまたぎ、真摯に人間のドラマとして撮った日本人の若い映画監督、福永壮志氏にまず敬意を表したい。 監督初の長編映画ということだが、小津流の省略の美学さえ感じられ風格す…
炭鉱と映画 日本の石炭需要は変わらず、しかし、炭鉱は閉山されて久しい 炭鉱をえがいた映画に傑作が多いのはなぜだろう。 福島いわきの常磐炭鉱の閉山にまつわるエピソードを良質な娯楽映画に仕立てた『フラガール』(李相日監督)がヒットし、国内の映画賞…
映画 『歌え! ロレッタ 愛のために』 マイケル・アフテッド監督 ~トランプ大統領を支持するラストベルトが描かれている 米国映画はジョン・フォード監督の『わが谷は緑なりき』(1941年)を劈頭に断続的に炭鉱を描いて秀作を遺している。本作もその系…
映画 『ショコラ』 ロシュディ・ゼム監督 ~キューバ出身の黒人ボードビリアンの生涯 20世紀前半の幾年月、パリの夜を掌中に収めた“褐色のヴィーナス”ジョセフィン・ベーカーの毀誉褒貶に満ちた波乱万丈の物語ならたいていの人はしっている。敗戦直後、日…
映画『映画と恋とウディ・アレン』 ロバート・B・ウィード監督 小生、ウディ・アレンの映画がキライである。何故だか判然としないが相性が合わない。世評の高さ、ヒットしている事実をまず横において虚心になってスクリーンに注目するもキライという感情は拭…
ダグ・リーマン監督 『ザ・ウォール』 スナイパー(狙撃手)を主人公とした映画は数多い。その系列に特記したいと思える作品が本作だ。 舞台はイラクの砂漠地帯。建設半ばで戦火のため中断、放置され赤錆びたパイプライン、そして砲撃され崩れ落ち壁だけ残す…
映画『アイヒマンの後継者』マイケル・アルメレイダ監督 アイヒマン・・・いうまでもなく大戦中、ユダヤ人を強制収容所に送り込んだ元ナチス親衛隊中佐アドルフ・アイヒマン。戦後、南米アルゼンチンに逃亡、イスラエルの諜報機関によって発見、アルゼンチン…
映画 サラエヴォの銃声 ダニス・タノヴィッチ監督 監督は、デビュー作『ノー・マンズ・ランド』(2001)でボスニア紛争を一方の勢力に組みしない視点で真摯に今日のあるがままの人間の問題として描いた。当時の国際社会は、旧ユーゴスラビアの解体ととも…
ポーランド=フランス映画『夜明けの祈り』アンヌ・フォンテーヌ監督 〈神〉への畏敬を失くした民族は唯物論の毒を吐き出しつづける。 第二次世界大戦終結直後のポーランド、ドイツ軍に替わって事実上、ソ連軍の占領下に入った。ポーランド人たちの預かり知…
水資源の深刻さを反映した007シリーズ『慰めの報酬』 マーク・フォースター監督 007、ジェームズ・ボンドといえばスコットランド(と時勢をかんがみ、そう書いておく)の名優ショーン・コネリーによって英国映画のヒット・シリーズとして定着できた。…