映画の地球 音楽の気流 そして書籍の宇宙

智慧の水球に揺蕩うように生きてきたわが半生。そろそろ御礼奉公の年齢となったようで・・・。玉石混淆、13年の日本不在のあいだに誉れ高きJAPONへの憧憬を募らせた精神生活の火照りあり。

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映画の地球 ラテンアメリカの映画 6  モノクロームの美しいコロンビア映画『彷徨える河』 シーロ・ゲーロ監督

コロンビア映画『彷徨える河』 シーロ・ゲーロ監督 墨に五彩在り、という。東洋の審美眼を象徴的に要約したものだ。水墨によって森羅万象を描こうとの野心をもった東洋の画工たちは、墨で山なす緑を描き、新緑、盛夏の緑、湿潤な緑とさまざまな抒情を表出し…

映画の地球 プーチン独裁下のロシア映画 4  映画「大統領のカウントダウン」  エヴァゲニー・ラヴレンティエフ監督

映画「大統領のカウントダウン」 エヴァゲニー・ラヴレンティエフ監督(2004・ロシア映画) ソ連時代であったならば絶対に映画化されないポリテカル・アクション。共産党独裁のクレムリン首脳部は、首都モスクワで起きた反政府テロを大いなる恥辱として…

映画の地球 公開中  映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』 ジョン・リー・ハンコック監督

映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』 ジョン・リー・ハンコック監督 タイトルはなんとなく、米国のグローバル企業を指弾しつづけるマイケル・ムーアの映画のようだが、本作はドラマである。 マクドナルドを知らない日本人は絶対少数派だろうが、…

映画の地球 アフリカを描く 2 ガボン*映画『ル・アーヴルの靴みがき』

ガボン=フランス 映画『ル・アーヴルの靴みがき』 アキ・カウリスマキ監督 舞台はフランス第2の港湾都市ル・アーヴル。御大のニコラ・サルコジ大統領(ハンガリー移民2世)を旗頭にフランスは世界有数の移民社会だ。移民たちの政治的貢献はもとより、文化…

映画の地球 アフリカを描く 1 ケニア*映画『おじいさんと草原の小学校』ジャスティン・チャドウィック監督

映画『おじいさんと草原の小学校』ジャスティン・チャドウィック監督 アフリカのケニアが英国の植民地支配から苦難の戦いを経て独立したのは1963年のこと。ケニヤッタという精神的指導者の不退転の戦いよって独立は果たされた。 そのケニアが小学校の無…

映画の地球 ラテンアメリカの映画 5 ブラジル映画 『ニーゼと光のアトリエ』ホベルト・ベリネール監督 

映画『ニーゼと光のアトリエ』ホベルト・ベリネール監督 ブラジル ノーベル賞の季節ということで、その辺りから入ろう。 かつて精神疾患、特に統合失調症の患者に対して前頭葉切裁術が行なわれていた。その手術の結果、自我を奪う無気力にしてしまった。その…

映画の地球  プーチン独裁下のロシア映画 3 映画『スペツナズ ~ロシア特殊部隊』 アンドレイ・マルコフ監督

映画『スペツナズ ~ロシア特殊部隊』 アンドレイ・マルコフ監督 ロシア及び旧東欧諸国の映画を丹念に拾い上げている彩プロのDVDの一作。もともと連続テレビドラマとして制作された約45分の番組から2本選び、まとめた編集。ロシア陸軍のいわゆる特殊部隊ス…

映画の地球 プーチン独裁下のロシア映画 2 『チェチェン・ウォー』 

地球の映画 プーチン独裁下のロシア映画 2 『チェチェン・ウォー』 チェチェン紛争を描いたロシア映画のなかでは、もっともシナリオが練り上げられた作品が本作『チェチェン・ウォー』(アレクセイ・バラバノフ監督)だろう。この後に、ロシア映画における…

映画の地球  プーチン独裁下のロシア映画 1 『タイム・ジャンパー』

プーチン独裁下のロシア映画 №4『タイム・ジャンパー』 アホなタイトル、どうとでも取れるメリハリのないポスター・・・・・・を見ればB級映画で予想される範囲はできないだろうと思ってしまう。それでも観る気になったのは復活ロシアの映画界がタイム・ス…

映画の地球 公開中 フィリピン映画『ローサは密告された』

公開中 フィリピン映画『ローサは密告された』 ブリランテ・メンドーサ監督 昨年、フィリピンに誕生したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は麻薬密売組織に対して目には目を、と力の行使によって市長時代、地元の治安を目覚ましく改善したことで頂点に上り詰めたポ…

映画の地球 ラテンアメリカの映画 3 映画『エバースマイル・ニュージャージー』

私的な歯痛体験もあって、気になるロードムービー ~映画『エバースマイル・ニュージャージー』 ダニエル・ディ=ルイス主演ということでラテンアメリカ映画の範疇で語ることを失念していた。台詞が英語で通されていることも勘違いの原因だが、これは紛うこ…

映画の地球 ラテンアメリカの映画 2 日本で最初に公開されたアルゼンチン映画『黒い瞳の女』

日本で最初に公開されたアルゼンチン映画 『黒い瞳の女』マヌエル・ロメロ監督 アルゼンチン映画について書いたついでに。最近、フィルムセンターで1939年、アルゼンチンで制作された映画『黒い瞳の女』が修復されニュープリント版の完成披露が2日のみ…

映画の地球 ラテンアメリカの映画 1 メキシコの女優エルピィデア・カリロのこと

メキシコの女優エルピィデア・カリロのこと 年の瀬、掃除も兼ねた不用品の処分をしていると、一群のVHSビデオに出会う。それは主にラテンアメリカを舞台にした米国映画で1980~90年代に制作されたものだ。すでに繰り返し観たので内容は十分、把握して…

映画の地球 これから公開  サム・ペキンパー監督『戦争のはらわた』

サム・ペキンパー監督『戦争のはらわた』 言わずと知れた戦争映画の傑作として名を遺す40年前のフィルム。ことし公開40周年を記念してデジタル・リマスター版で蘇り8月下旬に単館ロードショウが行なわれる。マスコミ試写が解禁、改めてペキンパーの妥協…

映画の地球 トランプ大統領へ 1  映画『ライブ・フロム・バグダッド』 ミック・ジャクソン監督

トランプ大統領が嫌うCNNについて 映画『ライブ・フロム・バグダッド』 ミック・ジャクソン監督日韓共催のFIFA・W杯で湧いた2002年に米国の有料TV局から全世界に配信された映画。サダム・フセイン独裁下のイランで活動したCNNバグダッド特…

映画の地球 私憤から公憤へ 1 映画『ラビング ~愛という名前のふたり』ジェフ・コリンズ監督

映画『ラビング ~愛という名前のふたり』ジェフ・コリンズ監督 愛はときとして人を強靭にする。愛の力によって市井の人が控えめに歴史の一ページを開いてしまうことすらある。それはおそらく宝くじに当たるより稀なことだろうが、大金を確かに手にする人が…

映画の地球 これから公開 『リベリアの白い血』 福永壮志監督

映画『リベリアの白い血』 福永壮志監督 血が噴き出している南北格差の問題を国境をまたぎ、真摯に人間のドラマとして撮った日本人の若い映画監督、福永壮志氏にまず敬意を表したい。 監督初の長編映画ということだが、小津流の省略の美学さえ感じられ風格す…

映画の地球 炭鉱を描く 2 旧作4作まとめて 『フラガール』『黒い土の少女』『家族』『ブラス!』

炭鉱と映画 日本の石炭需要は変わらず、しかし、炭鉱は閉山されて久しい 炭鉱をえがいた映画に傑作が多いのはなぜだろう。 福島いわきの常磐炭鉱の閉山にまつわるエピソードを良質な娯楽映画に仕立てた『フラガール』(李相日監督)がヒットし、国内の映画賞…

映画の地球 炭鉱を描く 1   トランプ大統領を支持するラストベルトが描かれる映画 『歌え! ロレッタ 愛のために』 

映画 『歌え! ロレッタ 愛のために』 マイケル・アフテッド監督 ~トランプ大統領を支持するラストベルトが描かれている 米国映画はジョン・フォード監督の『わが谷は緑なりき』(1941年)を劈頭に断続的に炭鉱を描いて秀作を遺している。本作もその系…

映画の地球 アーティストの評伝映画 1 映画 『ショコラ』 ロシュディ・ゼム監督

映画 『ショコラ』 ロシュディ・ゼム監督 ~キューバ出身の黒人ボードビリアンの生涯 20世紀前半の幾年月、パリの夜を掌中に収めた“褐色のヴィーナス”ジョセフィン・ベーカーの毀誉褒貶に満ちた波乱万丈の物語ならたいていの人はしっている。敗戦直後、日…

映画の地球 キライ編 1 映画『映画と恋とウディ・アレン』 ロバート・B・ウィード監督

映画『映画と恋とウディ・アレン』 ロバート・B・ウィード監督 小生、ウディ・アレンの映画がキライである。何故だか判然としないが相性が合わない。世評の高さ、ヒットしている事実をまず横において虚心になってスクリーンに注目するもキライという感情は拭…

映画の地球 これから公開2 ダグ・リーマン監督 『ザ・ウォール』

ダグ・リーマン監督 『ザ・ウォール』 スナイパー(狙撃手)を主人公とした映画は数多い。その系列に特記したいと思える作品が本作だ。 舞台はイラクの砂漠地帯。建設半ばで戦火のため中断、放置され赤錆びたパイプライン、そして砲撃され崩れ落ち壁だけ残す…

映画の地球 ナチの余燼 1

映画『アイヒマンの後継者』マイケル・アルメレイダ監督 アイヒマン・・・いうまでもなく大戦中、ユダヤ人を強制収容所に送り込んだ元ナチス親衛隊中佐アドルフ・アイヒマン。戦後、南米アルゼンチンに逃亡、イスラエルの諜報機関によって発見、アルゼンチン…

映画の地球 バルカン諸国の映画 1

映画 サラエヴォの銃声 ダニス・タノヴィッチ監督 監督は、デビュー作『ノー・マンズ・ランド』(2001)でボスニア紛争を一方の勢力に組みしない視点で真摯に今日のあるがままの人間の問題として描いた。当時の国際社会は、旧ユーゴスラビアの解体ととも…

映画の地球 これから公開 東欧の映画 1

ポーランド=フランス映画『夜明けの祈り』アンヌ・フォンテーヌ監督 〈神〉への畏敬を失くした民族は唯物論の毒を吐き出しつづける。 第二次世界大戦終結直後のポーランド、ドイツ軍に替わって事実上、ソ連軍の占領下に入った。ポーランド人たちの預かり知…

映画の地球 環境編 1 

水資源の深刻さを反映した007シリーズ『慰めの報酬』 マーク・フォースター監督 007、ジェームズ・ボンドといえばスコットランド(と時勢をかんがみ、そう書いておく)の名優ショーン・コネリーによって英国映画のヒット・シリーズとして定着できた。…